老人性うつの高齢者にどのようにして接するかは、介護現場では切実な問題になっています。入所前は老人性うつではなかった高齢者も、入所してから間もなくして発症するケースが目立っているためです。一般的なうつ病患者への接し方と同じような形で構わないのは確かですが、やや違う面もあるので注意しましょう。基本的には無理に元気にさせようとしたり、うつになっていることを咎めたりしてはいけません。うつであることを強調せず、あくまで自然体で接するのが当たり障りのない対応方法です。ただ、高齢者の老人性うつではこれだけでは改善しないことが多いです。介護現場では、一般的なうつ病の場合との違いを意識することも重要です。
効果的な接し方を理解するには、原因を比較するのが良い方法です。一般的なうつ病は過度なストレスが原因のことが多く、社会生活を送るようになって間もなく強いプレッシャーに苛まれてうつ病になる傾向があります。しかし、介護現場ではプレッシャーによってストレスを抱えているわけではないのが普通です。老人性うつの原因としては家族と別居になったり、配偶者を失ったりしたことへの喪失感が主なものとして知られています。また、施設に入ることになり漠然とした不安感が生まれていることが原因の場合も多いようです。この心理状態を克服するには、必要とされているという実感を持たせるのが大切です。施設での共同作業やレクリエーションなどの際に役割を持たせ、やるべきことをやったら称賛することが効果的です。